原状回復の費用負担

2006年11月18日


賃貸契約を解約して退居明渡しを行う場合、貸主と借主との間で、原状回復における費用負担で何かとトラブルが生じる場合がある。現状はこうだ。1.貸主は、賃貸契約書にもとづき、原状回復工事の費用負担を借主に要求。善良な貸主は借主に対して敷金を少しでも返還してあげたいと思っているが、ある程度の金額は契約書に基づいて借主に費用負担してもらいたいと考えている。2.借主は仲介業者から契約時に退居時の原状回復に関しての費用負担について十分説明を聞いているものの、民法上、もともときれいにして賃すのは貸主の責任であり、自然損耗や経年変化による価値の減少は賃料の一部分に織り込まれており、特別の破損や汚損がない限りは原状回復費用を負担する必要はないとの主張。3.東京のように貸主が礼金を2ヶ月とっているエリア、一方で広島のようにあまり礼金の設定に馴染みのないエリアのいずれに対しても、地域の慣行に一切配慮せず、国土交通省の役人が原則論を繰り返す。また、それに呼応する形で新聞・テレビを中心とするマスコミ等が社会正義をぶち上げ、さらに、消費者相談センター、弁護士、司法書士等々の指導、発言、説明が続く。4.退居時の敷金の精算において、借主の代理人として動く会社が出現しており、ともすれば、双方の主張が先鋭化しがちである。5.身近となった訴訟社会の到来。6.借主と貸主との間の、以前と違ってきた淡白な、情の通わない関係。7.原状回復における費用負担の統一的な基準が存在しない。(国土交通省のガイドラインでは、かえってトラブルを誘引しかねない。)8.同じ建物でも修繕履歴の違いにより、部屋間の費用負担に差が生じてしまうことが出てくる。9.壁や天井のクロスや、床の材料等のグレイドの違いから費用負担額が違ってくる。10.無許可のペット飼育が結構多く、汚損・破損・悪臭(臭いがしみ込んでいることも多い。)でのトラブルが多い。他にも、色々あるが、退居時の原状回復の費用負担に係るトラブルを少なくするには、①全国的な統一基準を作成し、また、関連の法を整備する。 ②契約自由の原則に立ち返り、特約事項に原状回復の規定を盛り込んだら、それを最大限に双方が尊重し、公序良俗に反しない限りは、決定的なものとして取り扱う。これしかないように思われる。仲介業者の精算時における、必要以上の苦労は除かれなければならない。合理的な基準が確立され、それに対して世の大方の理解が得られることを切に祈る。